Back to Home

『モネのあしあと』に見る、原田マハさんとモネ

25 July, 2021
『モネのあしあと』に見る、原田マハさんとモネ

当サイト・当記事には広告及びPRを掲載しています

モネの作品には、人を取り込んで包み込んでしまうような、圧倒的な没入感があります。
『モネのあしあと』

 
著者である原田マハさんは本文の中で、モネの絵画をこう表しています。実際モネの描く絵画には他の絵にはない魅力があり、アートに対してど素人の私でも、そこに何かがあることを感じられる気がするのです。
今回は、アートを題材とした作品が人気の小説家である原田マハさん『モネのあしあと』から、マハさんとモネ、そしてモネの魅力についてを探ります。
 

マハさんとアート

 
『楽園のカンヴァス』や『暗幕のゲルニカ』をはじめとした数多くのアート小説を書かれている原田マハさん。これまでに、エッセイを含めマハさんの作品を楽しませていただきましたが、「絵ってこういう裏側があるんだ」とか「昔の画家はこんな葛藤があったのか」と、アートに対する新たな知見をもストーリーの展開とともに楽しませていただけるのが魅力です。
 
やはり、そうしたアートへの驚きをたっぷり詰め込まれる作品の裏側には、マハさんの経歴とアートとの素敵な向き合い方があります。
 

美術館は友達の家を訪ねるように


森美術館の設立準備室やニューヨーク近代美術館での勤務、フリーのキュレーターとしてお仕事をされており、アートに対する見方はプロ。一流の作品をたくさんみられてきたからこそ、描かれるお話の数々にも細かな”リアルさ”が湧き出ています。
やはりアートのお仕事をずっとされてきたとあって、絵に対する愛は相当なものであると、次の一文からは感じ取らせていただきました。
 

世界のどこであれ、美術館のある都市に行けば、友だちの家を訪ねるような心持ちがした。
『モネのあしあと』

 
本当に絵が、そしてアートがお好きなんだろうなと。そんな気持ちを強く感じます。だからこそマハさんのストーリーの中からは、絵が生きているかのような、そんな力強さや活力、愛を文面を通してもどこか感じられるような気もするのです。
 

マハさんとモネ

 
本文の中には、こんな一文もあります。
 

苦しい時期を乗り越えて、目指した道を進んでいけば、いずれその理由がわかると思っていたのではないでしょうか。そういう姿を、自分の人生に重ね合わせていました。
『モネのあしあと』

 
モネをはじめとした印象派の画家たちは当時、絵もなかなか認められず、生活に苦労していたようです。そうした中でもモネは、自分のスタイルを貫いたことが伺えます。そんなモネの姿に自分を投影されたことがこの一文からは感じられます。
 
モネを深く愛するようになったのはとある美術館での出来事であったようですが、直向きに画家としての自分を確立するべく走り抜かれたモネの姿は、マハさんにとっても大変心強く映られたのではないかと拝察します。
そうした力強さは、どこか作家としての道を歩まれるマハさんの背中も押しているのかもしれません。
 

マハさんに気付かされたモネの魅力

 
2020年秋頃、私はとある美術展へ出かけました。上野の西洋美術館で開かれたいた、ロンドンナショナルギャラリー展です。これまでアートへの関心などなかった自分が、新しい衝撃を感じてみたいという軽い気持ちで行きました。
 
そこで、モネの作品に心が躍ったことを今でも覚えています。
 
本展示での目玉はゴッホの『ひまわり』でありましたが、確かにひまわりも大変見事な作品であったものの、個人的にはモネの色使いやタッチに心を惹かれていました。
 

モネ作品の言語化

 
ですが、アートへ全く明るくなかった私ですので、そのモネの作品の魅力をうまくアート視点で理解できていません。感じたままに、良い、綺麗、なんか惹かれる、とただそれだけの語彙力でしか表現できませんでした。
ですが、マハさんの本書を読んで、モネの魅力をアート的な視点で言語化できたように思います。特にモネをはじめとした印象派とはどういう意味かがはっきりしました。
 
昔、印象派の集まる展覧会を見た評論家が、モネたちの絵をまるで落書きのようだと批判。それは自分が見た印象をそのまま書いていると指摘したということがあったようです。モネたち印象派の画家らはその言葉をそのまま受け止めて、自分たちを”印象派”として名乗るようになったようでした。
 
つまり、見たものをそのんままに絵としてアートとして表現するのではなく、自分が感じた印象として表現されている。だからこそ、輪郭もぼんやりしたいたり、タッチが淡い部分もある、写実的でない理由はそこにあるのだと思いました。
 
アートは十人十色の考え方がありますので、どのような見方でも良いのだと考えます。ですが、一つの見方として、印象派という言葉の意味を理解できたことは同時に、モネの作品の魅力がより自分の中で強まったようにも思うのです。
 

About the Author

suda

suda

/

知的好奇心旺盛な20代。多趣味で、読書とプログラミングが好き。夢は妻と併用の木の温もりを感じる書斎を設けること。