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コロナ禍によって働き方や生活の仕方が一変してきた昨今、都心ではなく地元や地方のゆっくりした時間の中での生活を考えている人も多いと聞きます。
また、SNSを中心としたネットコミュニティの発展によって社会は大きく変わり、色々な問題を目にすることが多くなった今、なんだか毎日精神的にも疲れちゃうな〜なんて思う方も多いのではないでしょうか。
『週末、森で』という4コマ漫画調の本書は、そんな現代人の私たちに、自然や人々と触れ合うことの良さを改めて認識させてくれると共に、人生をもっと身軽に生きるためのコツとも言える深い言葉たちが、優しい登場人物たちのよって語られています。
なんだか心が疲れていると感じるならきっと、そんな心や頭をほぐしてくれる、やさしさに満ちた読書タイムを本書は届けてくれるはずです。
イラストレーターでもある著者の増田ミリさんは、『すーちゃん』シリーズをはじめとしたベストセラーを手がけられている方です。増田さんの絵は、なんだかみているだけで心が温まるような、そんなほんわかした優しいタッチが特徴で、本書においてもその絵の雰囲気が、より物語を魅力的にしています。
『週末、森で』は、翻訳の仕事を生業とする「早川さん」と、旅行代理店で働く「せっちゃん」、とある会社の経理部に所属している「マユミちゃん」の女子三人組によって展開されるお話。
ある日田舎で暮らすことを思いたった早川さんが、実際に田舎暮らしをスタートした場面から始まります。近所の方々とすぐ仲良くなれる早川さんは、英語の先生をしてみたり、近くの公民館で着物の着付けをレクチャーしたり、近所の民宿のおじさんからカヤックをもらったからと実際に乗り回してみたり。スローライフを満喫する場面が多数登場します。
そんな早川さんの元へ、都会で毎日懸命に働いて疲れたせっちゃんとマユミちゃんが、癒しを求めるように早川さんの元を訪れ、自然やアクティビティを満喫するといった内容です。
エッセイのような本書は、登場人物三人がそれぞれ自然の中で感じたことから、人生をより良くするための秘訣を学べます。それは特別難しいことでもなんでもありません。本当に当たり前のことでもあるのですが、それだけ今の生活において自分の思考が凝り固まっているのかなとも考えさせられます。
例えば、マユミちゃんが早川さんと一緒にカヤックに初めて挑戦する場面。マユミちゃんは初めてのカヤックですから、行きたい方向にうまく進むことができません。その姿を見た早川さんが手元を見るのではなく、行きたい方向に目線を向けて漕ぐことをアドバイスします。この場面からは、目先のことに集中しがちな私たちの姿を連想させられました。
どうしても夢中になっていることや頑張ろうと力を入れてしまう時ほど、目の前のことに注視すぎちゃうもの。こうした当たり前のような考え方というか、人生における”ものの見方”みたいなものが本書では多数登場し、その度にすっと心に入ってきて、「こんな感じでもっと視点を変えて、生活にゆとりを持ちたいよな〜」と考えさせるのです。また、せっちゃんやマユミちゃんの働く姿にはきっと、共感できる方も多いと思います。
私も、いくつかの場面で「こんなことあるよなぁ。。。」と思い、その度に彼女たちの姿や心と自分の感情とを照らし合わせていました。その働く姿は”仕事あるある”な感じでもありますから、きっと男女問わず、自己投影がしやすいかと思います。働いて疲れたせっちゃんとマユミちゃんが、早川さんの住む田舎で自然や人々と触れ合うことで、本来の伸び伸びとした生き方やしなやかな考え方に気付かされる。そうして気づいたことを元に、また毎日の仕事を懸命に頑張る。
本書の構成が、自然からの大いなる学びを実際に仕事をはじめとした実生活の場面で生かしていいくような形になっていますから、読み進める読者の心にすんなりと、新たな考え方が巡らされていくのではないかと考えます。
「もっとしなやかに生きたいな。」そんなことを思わされる、女子三人組のほっこりストーリーでした。