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大統領の苦悩と葛藤 - バラク・オバマ氏『約束の地 大統領回顧録Ⅰ 下』

10 September, 2021
大統領の苦悩と葛藤 - バラク・オバマ氏『約束の地 大統領回顧録Ⅰ 下』

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以前、本書の上巻についてをご紹介しました。

上下巻ともに分厚く大変長い本でありますため、普段政治に明るくない私としては読み進めるのか一瞬躊躇しましたが、続きが気になりすぎて、上巻読了後すぐに下巻を近くの本屋さんにて購入するに至りました。

大統領という仕事


14章〜27章の全四部構成となっている下巻では主に、大統領就任後の様々なご活動について裏話やご自身で考えられていたことも含めて、事細かく記されています。

サミットでの話に始まり、国民皆保険の実現に向けた医療保険改革法案成立への動きや、ハーバードの黒人文化研究の教授逮捕による黒人白人に関する問題のこと、現在も大きな問題になっているアフガニスタンに関する軍事行動のこと、ノーベル平和賞、イラン・中国・ロシアとの関わり方、プーチン大統領との会談、中国とのスパイによる駆け引き、金融改革に関する政策、大規模なメキシコ湾での原油流出事故の舞台裏などなど、多くの内容が綴られています。

そこには、大統領率いる”チーム”としての力強い結束や支えについてももちろんですが、駆け引きや、裏切り、また大統領として自身の理想だけを追い求めることの難しさや一議員として奮闘されていた頃とのギャップなどについてもまとめられています。

また、父としての顔もあるオバマさんの、大統領ならではのプライベートにおける悩みや葛藤についても伺うことができました。

大統領としての大きな教訓


途中、大統領として新たな教訓を学んだとして、戦略的・戦術的に考慮しなくてはならないことばかりであり、上院議員時代よりも一市民であった時代よりも、感情に基づいた行動に対しての自由を持つことができないといったことをあげられています。

自分が若い頃から募らせてきた理想的な世界であったり、心情の多くを、政治の世界の中だけでなくアメリカという広大な国家のもとに広く反映させたい。そう強く願われていた部分がきっとオバマさんの中にあったかと思います。

ですが、実際に大統領になってみると、そうした理想は簡単に実現させられるものでなく、その裏には良くも悪くも”配慮すべき事”が多分にあるんだろうなと、大変考えさせられました。これはどれだけ大統領のくらいに就く人が、心の綺麗な人であっても、やはり簡単にはいかない事なのだろうと思うのです。もちろん仕事においてもそうですが、なんでも綺麗事ばかりではうまくいかないことも多いのが世の中というもの。

とはいえ、他国との兼ね合いも含め、政治戦略的なことも含め、戦略的・戦術的なことに囚われてしまうことはなんだか寂しいとまでに思ったのが正直なところでありました。

父としての苦悩


先述の通り、大統領としてだけでなくお父さんとしての一面に関しても諸々綴られており、その中には多くの苦悩や葛藤が垣間見れます。

政治一家な家計に生まれたわけではないオバマさんにとって、自分が幼いときに体験できたごく普通の家庭的な体験。そうした体験を、自分の娘たちに同じように体験させてあげることができない。この点について大変悩まれていた印象でした。

休みの日にはアメリカの雄大な自然であったり、娯楽を思う存分楽しむことが一般家庭ならできるものでも、大統領家族となれば簡単にできない。休暇をとってバカンスに出かけるにしても、事前に多くの計画が練られた土地で、護衛の方々に囲まれた中、サイクリングも決められた道しか通ることが許されないようです。

すぐ近くのファストフード店へふらっと立ち寄ることも、お気に入りに本屋さんへ出かけることも、そんな簡単なことでも大掛かりになってしまう。友達のお家に遊びに行く時も、おうちの外には護衛の方が常に見張りとして立たれているようなことも綴られていました。

そうした環境下の中で、ご自身のお子様と同年代の子達と同じような生活をさせてあげられないことは、大変苦痛でもあるのが文面からひしひしと伝わってきます。いくら物や食や安全に一切困ることのない生活とはいえ、ある程度の自由がないということは、10代という特に多感な時期の子供にとっては大変な苦痛であることは容易に想像がつきます。自分もその身であれば”普通の暮らし”というものに、大きな憧れと欲望を抱くだろうなと思うものです。

職務においても大きな責任とプレッシャーが常に押し寄せてくるわけですが、家庭においても、大統領なりの大きな悩みがそこにはあるのだと知ることができました。

---普段あまり政治的な本は読んでこなかったのですが、こうして新たなジャンルとして読み進めてみると、色々な価値観や考え方も知れる気がして大変新鮮であったように思います。

お恥ずかしながら、まだ私のレベルでは政治情勢に関して多くを理解できているわけではありません。ですが、こうした自分でもわかる著名な方の本などから徐々に、政治に関しての興味関心を育んでいくことも良いのかなと思いました。

About the Author

suda

suda

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知的好奇心旺盛な20代。多趣味で、読書とプログラミングが好き。夢は妻と併用の木の温もりを感じる書斎を設けること。