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私が読書に興味を持ち出したのは高校を卒業してすぐのこと。それから数年が経った時、本が好きならと母方の祖父より頂いたのが本書です。
自営業で仕事をし、子供を育て、人生において様々な経験をして80を過ぎた祖父から受け取った本ですから、様々なメッセージがそこには含まれているだろうと、そんな思いで読み進めました。
実際に本書からは、現代の世の中を読み解く上で大切な多くの気づきを得らたと感じています。様々な社会問題・環境問題が渦巻く現代において、今一度大切にすべき視点の数々と、問題の根本となる歴史的背景などについてをこの本からはじっくりと学ばせていただきました。
本書の第一刷は2012年であり、少し前の本ではありますが、その当時から先進国をはじめとした多くの国々では資本主義社会が頭打ちになりかけている事がわかります。世界的に長期の不況が起こっているその背景に資本主義の構造がどう関係しているのか、しっかりと理解を深めることができます。
この資本主義という社会構造は、現在世界的な問題となっている環境問題、また本書発行の少し前となる2011年の東日本大震災による原発事故に関する問題などとどのように影響しあっているか。その点についても中谷さんの視点で深く解説がなされていました。
資本主義という言葉は、経済やビジネスといった類のことに触れる中では、しばしば目にすることであります。ですが、この資本主義という構造は、大きなメリットも持っている反面、私たちの身近な生活における様々な問題とも密接に関わっていることに気づかされるのです。
世界的な不況だけでなく、貧困・格差の拡大、自然環境の問題、労働者の心理的変化、日本の伝統的経営体制の崩壊など、そこには多くの事象があることを知れます。また、こうした資本主義構造のそもそも根底となる部分には、西洋の歴史と価値観がポイントとしてあり、本書を通しては、資本主義構造の歴史的な成り立ちや、そもそも問題が起こる理由についても、歴史をもとに紐解かれているのも大変印象的でわかりやすかった印象でした。
日本は現在のような低迷期となる以前、特に高度経済成長期などにおいて、世界的にもトップレベルの技術力を有していたことは承知の通りであります。こうした日本の技術力や会社としての力が優れていたことの背景には、日本独自の伝統的な社会システムが大きな下支えとなっていたのだと気づかされました。
そこにはやはり、日本人として遺伝子レベルで脈々と受け継がれてきた価値観があって、それに抗うことなく独自の発展を目指していったことも成功の一因であったのかもしれません。
確かに諸外国の先進的な技術や思考を実際に取り入れ、社会をより発展させていくことは大変重要なことであって、特にグローバル化の進む現代においては欠かすことのできない部分かと思います。
そうしたグローバルな考え方の輸入を否定するのではなく、日本人として、伝統的に考えられてきたシステムというものをブラッシュアップしながらもベースに置くこと。これが、日本における経営や開発、またはもっと個人的な組織運営なんかにもベストな状態であるのかもしれません。
まったく経済であったり経営であったりに明るくない私の、素人的な解釈ではありますが、こうした日本独自のエッセンスというのが、今後の資本主義社会における混沌を生き抜く上でも改めて重要な要素となるのではないかと個人的は思うところです。
先述の通り、環境問題と資本主義の関係を紐解いていく中で、西洋の国々における自然観についても言及がなされています。
日本においては自然に対する慈しみの心であったり、八百万の神にはじまるような、有情の心というものを見出すといった価値観・物の見方がります。これは仏教的な視点も関わってくる部分かもしれません。ですが、西洋的な価値観ではそうではなく、違った視点で捉えられるのでした。
こうした部分も資本主義による環境問題などと密接に関わっているのだと、本書では理解することができます。
世の中は様々な価値観の違いによって色々な問題が発生していますが、そこには、ある意味で”致し方ないこと”と捉えるしかない問題も多くあると思うのです。
価値観や宗教観といったことは、特にグローバルな視点で物事を考えるならば、なんらかの相違となって現れることがあるでしょう。
そうした時に、どこまでお互いに譲歩し合うのか。これは大変難しいことであって、つまり、こちら側としても相手側としても多様な価値観や宗教観について理解しておく必要もあるといえます。
世界的に大きな問題の背景には、ただ邪な考えが先行して云々…といった場合もあるでしょうが、価値観の違いといった致し方ない事もそこには存在しているのだと改めて痛感します。これに対する正しい答はなんでしょうか。少しでも良い解決策を導いていくためにも、哲学やその類に関する勉強は必要な事なのかもしれません。
---資本主義とは、やればやるだけ自分に返ってくるような、そんな見方ができる社会システムかと思います。ですが、デメリット的な負の部分に関しても”やればやるだけ返ってくる”のだと考えさせられました。
人間としての利益と繁栄を追求しながら、いい意味での”見返り”が得られるよう、今一度多くのことを見つめ直しながら日々生活したいものです。