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神話を学ぶと見えてくるもの - 中沢新一さん『人類最古の哲学』

24 August, 2021
神話を学ぶと見えてくるもの - 中沢新一さん『人類最古の哲学』

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神話と聞くと、大変壮大な物語を思い浮かべやすいかと思います。アルテミス、ポセイドン、ゼウスといったギリシャ神話に登場するような神々であったり、はたまた、アマテラスやスサノオといった日本的な神々の存在・神話も浮かびます。

本書を読了するまで私は、神話というものがただ「常識を超越した次元での架空の物語に過ぎないものである」という認識でしかなく、そこには多くの事象が織り交ぜられていることに強く感動したものです。神話についてを探究していくことは、哲学的思考であったり、世の中の成り立ちについてを深く考えさせられることでもあるのだと気付かされました。

神話についてを学ぶということ


中央大学の教授で、宗教学者、思想家でもある中沢新一さんが書かれた本書は、哲学と神話の結びつきから始まり、神話というものがはるか昔からどのような位置付けをなしていたのか、またどのようにして分布し、世界各地でどういった共通点を持って語り継がれていったのかなどを紐解かれています。

途中ディズニー作品としても大変有名な「シンデレラ」と神話との関係が解き明かされますが、シンデレラは神話として同じような話が世界の様々な場所でそれぞれ多少の差異も持ちながら継承されてきたことを知れます。そこには、社会的なメッセージであったり、共通して語り継がれている概念のようなものが垣間見れたと感じました。

また、宗教と神話の相違も大変興味深いものです。どちらも、超越した存在が登場したり、私たちの力ではどうしようもできないことへの解決のため、人力を超えた力が登場したりもしますが、その根底となる部分には明確な差異があることも本書を通して理解を深められます。神話というものが最古の哲学と考えられる理由が、こうしたところからも見えてくる気がしました。

神話的思考を持つことの大切さ


本書全体を通して感じたのは、神話には独特な思考があって、それは簡単なものでないため安易に理解できるものではありません。ここに哲学と共通するものがあるかと思うのですが、こうした思考が、現代のような複雑な社会の中では、より問題解決や自身の美学を確立するといったことにつながるのかと考るに至ります。

節分に豆まきをすることがあります。これも意味があるようで、神話的思考において豆とは男性性と女性性を媒介するものであると考えられているようです。ここから発展して、豆が生と死の媒介といった意味をなすことがあるようであり、こうした考えも、少なくとも私自身は安易に理解できるものでありませんでした。鬼に対して豆を撒くことで、鬼という悪なるものを退散させる。そうした思考で止まりがちであり、そこから先に、男性性と女性性であったり、生と死の媒介が絡んでいることまでは容易に想像できるものではありません。

ですが、本書を読了した今、こうした神話的な解釈で物事を考えられるようになると、新しい考え方や価値観といったものが芽生えるのかなとも思うわけです。

本書だけでは神話全てを掴むことができるわけではないので、今後も多数の神話に触れながら、神話独自の思考を自分の中に蓄積することが必要といえるでしょう。そうした先には、今までと違った自分の中の価値観や考え方が芽生え、自分の中の哲学として、また一つの美学として、核となるものが形成させれるのではないだろうかと考えるに至りました。

神話に見られる普遍性


また、世界各地で少しづつ形を変えながら同じような神話が語り継がれていることからも、そこには人間としての普遍的なものがあるのだろうと推察します。この点に関しても先述のように、今後自発的に多くの神話と巡り合っていく必要があるかと思いますが、多くの神話に触れる中で、やはり普遍的な何かが見えてくるのではないかと思うのです。

そこにはきっと、人間として生きることであったり、植物や動物、自然など、私たちの身の回りの存在と共生していく中で大切にすべき重要なエッセンスが多数詰め合わされていると考えます。これらを踏まえると、コロナだけでなく環境問題も深刻化してきた現代においては、神話独自の思考に触れることは、人間として・生命として、”原点”に立ち返るといった意味において、大変意義のあることなのかもしれません。

---本書は神話や民俗学、また哲学などの類についてあ

About the Author

suda

suda

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知的好奇心旺盛な20代。多趣味で、読書とプログラミングが好き。夢は妻と併用の木の温もりを感じる書斎を設けること。