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一九九三年には、スロバキアが分断独立して、チェコ共和国とスロバキア共和国が誕生した。
『プラハ巡覧記』
この本を手にするまで、チョコという名前を聞いたことはあっても、先述のような歴史について全く理解がありませんでした。お恥ずかしい話、チョコの場所すらも怪しかったものです。
でも、こうした新たな知見を与えてくれるのは、いつも本であり、今回ご紹介するような旅をそのままリアルに綴ったエッセイからは特に、学ばされることが多いと常々感じます。
今回は、前川健一さんの『プラハ巡覧記』という旅エッセイから学んだことを綴ります。
旅といえば、なんといっても美味しいご飯。特に海外に行けば、見たことも食べたこともないような料理に出会えるものです。このプラハ巡覧記においても、いくつかチェコの食事が紹介されています。
その中でも、個人的に気になったのがこの「ロフリーク」でした。
口の水分を全部奪うようなパンで、味がない。甘く、フカフカのパンが好きではない私とのい相性はいいのだが、味と香りに乏しいのが難点だ。
『プラハ巡覧記』
一本10円以下で買えるという大変お安いこのパンに、なんだか引かれてしまいました。パンといって想像しやすいものは、ホテルの朝食やディナーに登場する、バターロールといったらいいのでしょうか、丸っこいふわふわしたパンであったり、食パンなんかが該当するかと思います。
ロフリークは説明を見る限り、それらの真逆をいくパン。
決して無味で甘味もないパンをこのタイプではありませんが、変に甘ったるくないあたり、飽きも来ずただひたすらに食べ続けられるようなパンなんだろうなと、勝手な想像が膨らみます。
食べ物に関しては、前川さんのこんな見方も見られました。
私たちは普段バナナを手軽に手に入れて楽しむことができるわけですが、その8割方のバナナは輸入によって私たちの元にやってきていると言われています。中には日本で栽培されたバナナもあったりしますが、よくスーパーで目にするようなお手頃価格のバナナのほとんどがフィリピンをはじめとした海外原産のバナナです。
このように、日本のようなバナナをたくさん栽培するようなことがない土地で、バナナを気軽に楽しむことができるということは、それだけ政治と経済が自由だと前川さんは考えらました。数十年前の共産党時代のチェコにおいては、バナナが大変高価なものであったことを一読されてから、経済や政治との関係に着目されたようです。
普段何気なく食べている食材たちは、日本の今の形が変われば、今後手に入れることが困難ものになるかもしれません。そう考えた日から、バナナ一つにとってもスーパーで目にした際、なんだか不思議な気持ちになりました。
チェコの家庭料理に毎日触れるうちに著者は、あることに気付かれます。家庭料理なんて可もなく不可もないような味だということ。
自分の母が作る料理が絶品だと、賞賛したくなるほど美味しいということが毎日ではないし、かといって食べれないと思うほどまずい料理が続くわけでもない。異国の家庭料理を食べ続けるうちに、こうしたことに視点を向けられたようでした。
私たち人間はきっと、毎日目も眩むほどの美味しい料理やご馳走を食べ続けることになると、それはそれで飽きてしまうんだろうなと思います。たまに食べる霜降りのサーロインが美味しいわけであって、毎日はなんだか嫌になってしまう。そんなものなのでしょう。
そして、異国の料理だからといって、毎日がご馳走なわけでもないと。そんなことを語りかけられているような気にもなりました。
どこだかの国の料理は毎日食べても美味しいなんて、どこかで聞いたことがあります。どこだろう。フランスのパンだったかな?でも、毎日ピザやパスタっていうのも案外飽きるものだと、イタリア旅行を経験した方が言っていたような。
時々手に入る刺激が、良いものでも悪いもので、人生に何らかの彩を添えていくれるんだろうなと、そんなことを考えさせられました。